Cirque Du Soleil: Corteo (2006)
(シルク・ドゥ・ソレイユ：コルテオ）

＜作品データ＞
リージョン： 1
制作： Sony Pictures
映像仕様： LBX
音声仕様： Dolby Digital 5.1 Surround (English), Dolby Digital Surround (English)
作品時間： 101分
画面比率： 1.85:1
CC： No
字幕： None

一人のクラウン（道化師）が眠っている。彼は自分が死んで葬儀が行われていることに気がつく。かつて仲間だった座長や空中ブランコ乗り、ダンサー達が大勢参列しているのは、自分のための死の祭典だ。これは夢だろうか？いつの間にかクラウン自身もステージ衣装を身に着け、これで最後となる舞台に立っている。天使に見守られながら、一人のクラウンの生涯を辿る旅が始まった。それは、天国と地上の狭間にあるミステリアスな空間での人生のフィナーレだ！

1984年にカナダのストリート・パフォーマー達によって結成されたシルク・ドゥ・ソレイユは、サーカス、ミュージカル、オペラ、喜劇の要素を融合させた新しいエンターテインメントを世に送り続けているパフォーマンス・グループだ。元オリンピック選手などが肉体の限界に挑戦したスリルあるアクロバットと、舞台装置から音楽・衣装まで、アーティスティックな演出で世界中で人気となり、現在は常駐公演と巡回公演合わせて世界中で12のショーを行っている。「コルテオ」は2005年に発表された新作で、現在は北米をツアー中。今後10年かけて世界中を巡回する予定だ。

本作はこれまでのシルク作品とはいくつかの点で大きな違いが見られる。最初に目に付くのは空間の使い方だ。円形の劇場空間の中央に円いステージを配し、直径の延長線上に伸びて舞台の袖へと繋がる通路もまた舞台空間だ。客席は完全に2分割され、ステージを挟んで両側に配置されている。この舞台設計により、イタリア語で「行列」を意味する「コルテオ」というタイトルにふさわしい、左右に行き交う動きが可能になった。さらに巨大なアーチ型の軌道にぶら下がったドリーは、複数のコンピューターによって自動制御されている。舞台仕掛が自動制御されることはシルクとしては珍しいことだが、その結果、ステージ上方の空間でのパフォーマンスにおいて、より長く複雑な動きが可能になり、一歩進んだものになったと言えるだろう。

そして「死の祭典」をテーマにした今回の演出では、パイプオルガンの音色で幕が開き、ダークな宗教色を表しながらバロック調の可憐な天使が幾度となく空を舞う。どこか物悲しくほの暗い中世ヨーロッパの雰囲気を醸し出している。セリフが多めでよりオペラ的な構成になっているのも目新しい。

シルク・ドゥ・ソレイユのアクロバットは、技とダンスを組み合わせるなど単純に一つのパフォーマンスを見せることに留まっていない点が大きな特徴だが、綱渡りとフラフープとラテンダンスを組み合わせたアクロバット、トランポリンと空中ブランコの組み合わせなど、シルクらしい技の融合は本作でも健在。道具の遣い方に凝った演出では、ステージ上を旋回する巨大シャンデリアに乗った優雅な空中アクロバットにのっけから目が釘付け。ヘリウム・バルーンで小人がゆらゆらと空を飛んだり、"Tibetan Bowl"（チベットの器）と名付けられた大きな器を照明としても楽器としても使って音楽を奏でる幻想的な世界は、現実を完全に忘れさせてくれる。これがシルク・ドゥ・ソレイユの魔力なのだ。

そしてもちろん、限界を究めた一流のアクロバット！肉体のしなやかさ、アクロバットの水準の高さには何度見ても驚きと興奮が沸き起こってくるものだが、「コルテオ」に登場する主なアクロバットだけをリストしてもこれだけの数があるからすごい。

Chandeliers（巨大シャンデリアにぶら下がる空中アクロバット）
Bouncing Beds（バウンシング・ベッド。ベッドをトランポリンに見立てたバウンシング）
Cyr Wheel（シル・ホイール）
Tight Wire（綱渡り、フラフープ、ラテンダンスを組み合わせたアクロバット）
Juggling（ジャグリング。ロシアのチェスレンコ兄弟4人によるリングパスやクラブパス）
The Marionette（マリオネット）
Helium Dance（ヘリウム・ダンス。小人がヘリウム・バルーンで空を飛ぶファンタジックな演出）
Teeterboard（シーソー）
Paradise（トランポリン。横長のステージと天井空間を活かした圧巻の演技）
Adagio Duet（アダージオ・デュエット）
Rhythmic Gymnastics（新体操の要素を取り込んだパフォーマンス）
Acrobatic Ladder（梯を使ったアクロバット）
Aerial Straps（エアリアルストラップ）
Tournick（鉄棒のアクロバット）

DVDによるショーの観賞はステージを間近に観る臨場感にはかなわないが、幾人ものパフォーマーの緊張の瞬間を同時に捉え続けるカメラは、時には人間の目より素早く動く。客席からはとうてい見る事のできない出演者の細かい表情や俯瞰のアングルもDVDでこそ味わえるものだ。

発表から僅か一年で米国盤DVDが登場した「コルテオ」。日本ではまだ目にすることのできないシルク・ドゥ・ソレイユの新作をじっくりと楽しむことができる一本だ。

1. Through the Curtain: An In-Depth Look at "Corteo"（45分）
特典映像の一番の目玉である舞台裏ドキュメンタリー。メイン出演者やスタッフへのインタビューを織り交ぜながら、「コルテオ」が一つの作品として成熟していくまでの発展を綴る。特に、プレミア一週間前のリハーサルから当日までの厳しさは格別だ。
初演の日を迎え、最後のミーティングでディレクターがパフォーマー達を激励する。「今までは僕のショーだったが、ここからは君たちのショーだ」。関係者の一体感、達成感がそのまま伝わって来る。じんわりと感動できる一本。

2. A Day in the Life of 'Corteo' Artists（11分）
朝目覚めてから舞台がはねるまで、二人のパフォーマーの一日を駆け足で追った映像。

3. Filming "Corteo"（8分）
DVDのためにステージを撮影した際の舞台裏映像。

4. Teatro Intimo（8分）
DVDではカットされた道化パフォーマンス「ロミオとジュリエット」の部分の映像。

5. Photo Gallery
舞台裏スティル映像のスライド・ショー

6. Cirque on DVD
シルク作品のDVD紹介

7. Cirque Club
オフィシャル・サイトのメンバーシップ紹介

8. DVD Credits
DVD製作クレジット

なお、DVDメインメニューの「Set-Up」から選択できる特典の字幕はスペイン語、ポルトガル語のみだが、フランス語でインタビューが行われている部分のみ英語字幕を表示することができる。

映像は1.85:1アナモルフィック。映画作品とは違い、舞台を撮影したフィルムはカメラ位置によって映像に差がある。本作でもカットによって明瞭度や発色に差があるが、デジタルノイズ等は一切見られないクリーンな映像で、色のにじみやライトのグレアはきちんと調整されている。ライブ映像としてはかなりの水準の高さ。
本編には英語字幕、CC共に収録は無いが、他のシルク作品同様、ストーリーラインはパフォーマンスで表現されているため観賞には問題ないだろう。

音声はドルビーデジタル5.1chとステレオを収録。5.1chトラックはセンターから左右、リアスピーカーまで、サラウンドが賑やか。バロック風の弦楽器の音色、ノスタルジックな旋律、ドラマチックな歌声が広く響き渡り、申し分ないクオリティ。