Rango (Blu-ray/DVD) (2011)
(ランゴ）

＜作品データ＞
リージョン： ALL
制作： Paramount
映像仕様： LBX
音声仕様： DTS HD 5.1 Surround (English), Dolby Digital 5.1 Surround (Spanish), Dolby Digital 5.1 Surround (French)
作品時間： 107分
画面比率： 2.40:1
CC： Yes
字幕： English,Spanish,French,Portuguese

主人公はおもちゃ相手にお芝居ごっこをしてはヒーローに憧れるおちゃらけ者のペット、カメレオン（ジョニー・デップ）。彼は飼い主と共にハイウェイを移動中に車から振り落とされ、独りぼっちで砂漠をさまよう羽目になってしまう。すぐさま全身が乾燥し喉もカラカラになった彼は、アルマジロ（アルフレッド・モリナ）の導きで、水を求めてダートという名の町を目指すことに。途中でタカに襲われながらも、偶然出会ったトカゲのマメータ（アイラ・フィッシャー）のお陰でダートにたどり着くが、そこは危機的なまでに水が枯渇し荒廃した町だった。
酒場に入った彼は自分を"ランゴ"と名乗り、ヒーロー気分でついつい7人の敵を一発で倒したという大ボラを吹き、町の天敵であるタカを単なる幸運で見事倒してしまったから一躍町のヒーローに！老亀の町長（ネッド・ビーティ）から保安官に任命され、ランゴはこの町に法の秩序を取り戻すべく大張り切り！
やがてモグラ一族によって銀行から貴重な貯蔵水が盗まれる事件が発生。ランゴと町の仲間たちは犯人を追うが、事件にはもっと深い陰謀が隠されていた…。

「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのゴア・ヴァービンスキー監督がジョニー・デップとまたまたタッグを組んだ、大ヒットCGアニメーション。

大人も子供も違った視点で楽しめる一本だが、まずはCG映像のすばらしさに目を見張る。モーションキャプチャーによって描かれたユニークなキャラたちが、本当の動物さながらに生き生きと動き回り、世界最高峰のILMが担当したVFXでスピード感あるアクションを展開。動物の毛並み、透明感のある目の表情、衣装のテクスチャーなどが実写とみまがうほどリアルに描かれている。もちろん砂漠の風景、ダートの町並み、水しぶきがあがるシーンといった背景も本物そっくり。CGアニメーションではアニメらしさを残すためにわざとマットな絵作りをしている作品もあるが、あくまでもリアルにこだわったこの作品のCGとして際立っていて、それだけでも一見の価値があるだろう。

また映画ファンとして見逃せないのは、ペットだったランゴが西部開拓時代のような世界に放り出され繰り広げるアドベンチャーが、名作ウェスタンへのオマージュたっぷりの痛快西部劇だということ。なにしろタイトルの「ランゴ」からしてあの「ジャンゴ」のギャグであり、ジョン・フォードのモニュメント・バレーそっくりの砂漠を舞台に、マカロニ・ウエスタンで観たようなシーンがいくつも登場。後半に登場するガラガラヘビのジェイク（ビル・ナイ）は「続・夕陽のガンマン／地獄の決斗」のリー・ヴァン・クリーフがモデル。同じ帽子を被っているのはもちろん、顔立ちに面影があるからすぐ分かるだろう。天敵であるタカのくちばしのところにメタルピースが着いているのは、「キャット・バルー」のリー・マーヴィンへのオマージュ。そしてクライマックスでは中高年のウェスタン・ファンが大喜びしそうなあの人も登場…！？

そんな映画へのオマージュは西部劇に限らず、製作者が好きな作品を好きなだけ入れ込んでいるようだ。水の利権を巡るストーリーは、ロマン・ポランスキー監督の「チャイナタウン」から来ていて、老亀の町長（ネッド・ビーティ）はジョン・ヒューストンが演じた悪名高きノア・クロスがモデル。ひ弱な主人公がヒーローにされてしまう設定は古いウェスタン・コメディの定番の一つだが、ランゴは60年代のヒット・シットコム「メイベリー110番」の保安官バーニーがモデルということらしい。バーニーを演じたのはドン・ノッツという俳優で、比較的最近では「カラー・オブ・ハート」でテレビ修理工の役で登場していた。ほかにも「ラスベガスをやっつけろ」や「地獄の黙示録」などなどのオマージュも見られるので、映画ファンはそんなところも大いに楽しめるだろう。

物語としては涙するような感動作ではないし、大爆笑するほどのコメディでもないのだが、水の利権を巡る「チャイナタウン」的なしっかりしたストーリーがあり、テンポ良い展開でウェスタンにつきものの決闘シーンもあり、美しいCG映像と軽快な音楽が心地良く、総合的な完成度は高い。気の利いたジョークにちょっと笑ったり、映画のオマージュににんまりしながらリラックスして楽しめるタイプの作品だ。

そしてなんと言っても声の主演のジョニー・デップの名演技によって、新たに映画史に残る名キャラクター、ランゴが誕生したのだ！俳優に実際に演技をさせて精密センサーでスキャンし、細かい表情を生かすCGアニメ化するモーションキャプチャーを使っているため、あの不細工なカメレオンがジョニー・デップの表情で動き回るから強烈だ。ひと癖あるキャラになるとジョニー・デップは最高に上手い。ジョニー・デップが声を務めたというよりも、カメレオンのアニメーションになったジョニー・デップなのだ。

そういった大人の映画ファンが喜ぶ演出が、ディズニーやドリームワークスのアニメーションとはひと味違ったところ。動物CGアニメーション最高傑作という評価も聞かれるほど。アメリカで2011年3月に公開された本作は、世界興行収入2億4000万ドルを超える大ヒットとなったため、パラマウントはアニメーション部門を発足させることになったというから、今後のパラマウント・アニメーションにも期待したい。日本では2011年10月公開予定となっている。

さて今回登場のBlu-rayは、107分の劇場公開バージョンと未公開シーン含む111分のエクステンデッド・バージョンを収録。気になる仕上がりはレビューアーが画質・音質共に満点を付けた驚愕のクオリティ！Blu-rayの品質もついにここまで来たかというほどのできばえ。詳しくは画質・音質の欄で記述するが、作品内容とBlu-rayのクオリティから言って違いなく2011年ベスト・ディスクの1つになるだろう。

(1) Audio Commentary
監督、プロダクション・デザイナー、アニメーション・ディレクターらによるオーディオ・コメンタリー。CGデザインや構成、コンセプト作りなど製作に関わる解説満載。エクステンデッド・バージョンのみに収録。

(2) Breaking the Rules: Making Animation History (HD収録、49分)
本作のメイキングと舞台裏を2つのパートで収録。作品のアイデアからアニメーション製作まで、作品完成までの軌跡をたどる。英語字幕付き。

(3) Deleted Scenes (HD収録、8分)
劇場公開時にカットされた10種類の削除シーンを収録。ただしすべてエクステンデッド・バージョンに含まれている。英語字幕付き。

(4) Real Creatures of Dirt (HD収録、22分)
砂漠に生きる生物の生態と彼らが本作のキャラクターに与えた影響を解説。子供の教育向け番組のような楽しい内容。英語字幕付き。

(5) Storyboard Reel Picture-in-Picture
ストーリーボード比較ができるピクチャー・イン・ピクチャー機能。劇場公開バージョンのみに収録。

(6) A Field Trip to Dirt
ユーザーが自分でナビゲーションしながら、ダートの街を巡ることができるというもの。

(7) Trailer (HD収録、2分)
本作の予告編。

(8) Credits
本Blu-rayの製作クレジット。

(9) Previews
パラマウントからリリースの作品の予告編。

またデジタルコピーとスタンダードDVD（リージョン1）が付属している。

アメリカのレビューアーが「ショッキングなまでに完璧」だと大絶賛した映像は、オリジナル比率2.35:1、1080p/AVC MPEG-4エンコード。まず映像の鮮明さと美しさとディテールの細やかさに、これは本当にアニメーションなのかと目を疑う。ランゴの爬虫類肌のざらざら感、動物たちの毛並みといった微細な部分が緻密に描かれ、キャラの動きが丹念に描写されている。ダートの街の建造物や小物の描き方も一切の省略は無く、空の描写もシーンによって青空だったり、雲がかかっていたり、燃えるような夕暮れだったりと、それぞれ太陽光をドラマチックに表現し、乾いた土地の空気を醸し出している。毛穴の一つに至るまで緻密に描かれたアニメーションの積み重ねが実写並のリアルな映像を実現しているのが、そのディテールを完璧に再現したのが本Blu-rayの画質力。色彩はランゴのグリーンな肌やシャツの赤といったビビッドな色合いを際立たせる一方、中間色や寒色のグラデーションも幅広く再現。もちろん濁りのない黒も良く出ている。デジタルノイズのたぐいも一切なし。どこをどう観てもオリジナルをパーフェクトにトランスファーしたと思える全く隙のないクオリティ。満足を通り越して驚愕の画質。

字幕は英語、英語SDH、フランス語、スペイン語、ポルトガル語字幕を収録。

英語DTS-HD 5.1chマスターオーディオも画質に負けず劣らず最高級の仕上がり。大げさなサラウンドや低音、爆音ばかりが高音質ではないということを納得させてくれる。冒頭からフクロウが音楽を奏でると、まるでコンサート会場のようなサウンドステージが広がり、個々の音が効果を発揮する一方、音楽と融合してハーモニーを持った映画サウンドトラックとして完成する。サラウンドを効かせながらも前方重視でしっかりと臨場感を出し、車の走行音や銃声といった派手な効果音も、決して誇張せず非常に適切な音で他のサウンドとバランスを取っていることで現実感を出す。低音に至っては単純な大音響と現実的な音量の絶妙な部分で合わせており、全く違和感なく映画の一部になっている。アクションシーンの浮遊感あふれる音の動きは、限りない広大な空間に広がる感覚。台詞も明瞭で漏らさず聞き取れるレベル。全く非の打ちどころのない音声だ。

音声はほかに、フランス語、ポルトガル語、スペイン語5.1chと解説付き英語音声を収録。