A Story Of Floating Weeds / Floating Weeds: Criterion Collection (浮草物語 (1934) / 浮草 (1959))
作品データ リージョン:ALL 制作: Criterion 映像仕様: 4:3 音声仕様: Dolby Digital Mono (Japanese) 作品時間: 205分 画面比率: 1.33:1 CC: Yes 字幕: English
ドサ廻りの一座が小さな田舎町に興行にやって来た。一座の座長は、得意先に挨拶に行くと言っては、毎日のようにどこかに出かけて行く。座長には、この土地に住む女性との間に一人の息子がいたのだ。それに勘づいた座長の愛人は、嫉妬のあまり座長を苦しめようと、一座の若い女にある事を依頼する。やがて、旅回りの一座にとんでもない災難がふりかかる・・・。"Yasujiro Ozu's Good Morning"(お早よう)、そして小津安二郎監督の代表作である"Tokyo Story"(東京物語)に続いてクライテリオンからリリースの"Stories Of Floating Weeds / Floating Weeds: Criterion Collection"(浮草物語/浮草)は、1934年作、モノクロ、サイレントの「浮草物語」と、1959年のカラー作品「浮草」を収録した2枚組。小津のホームグラウンドである松竹製作の「浮草物語」と、小津にとっては唯一の大映製作(*注)である「浮草」は、小津作品を語るうえではとても興味深い比較対象となる2作品だ。日本盤ならば考えられないこの2作品の組み合わせも、クライテリオンだからこそ実現できたと言えるだろう。製作年において25年という隔たりのあるこの2作品を比較鑑賞するうえで、是非知っておきたい点がいくつかある。言うまでもなく、この間に映画技術はモノクロ、サイレントからカラー、トーキーへと革新的な発展を遂げた。小津監督のキャリアにおいては、「浮草物語」の1934年はデビュー作「懺悔の刃」から僅か7年。しかし既に20本以上の作品を世に送り出し、ローアングルに静止カメラのスタイルが確立され、作品への評価と注目が一気に高まっていた重要な時期である。そしてリメイク版の(小津自らがリメイクであると断言している)「浮草」が撮られた1959年は、小津のキャリアの終盤に位置する。「浮草」以降は僅か4作品を撮って小津はこの世を去った。「浮草」は、松竹での小津作品とは異なり、よりドラマチックで華やかな雰囲気がある。主演の中村鴈治郎ほか、京マチコ、若尾文子というそれまではなかった顔触れというだけで期待は高まる。中村鴈治郎の見事な演技をカメラが真正面から捕らえた迫力。座長と京マチ子扮する愛人・すみ子が通りを挟んで怒鳴り合いをするシーンで降り注ぐ土砂降りのすさまじさ。若尾文子の瑞々しさ、可愛らしさはひときわ目を引く。そして当然のことながら、「浮草」では撮影の宮川一夫をはじめとする撮影スタッフもいつもの松竹小津組とは異なるメンバーであり、また、「浮草」は小津にとって初めてのカラー作品だが、大映と松竹ではカラー技術の違いから色合いそのものが異なる点にも注目したい。「浮草物語」から「浮草」までの間に起きた時代の変化もまた、それぞれの登場人物に影響を与えている。女性のちょっとした仕草や言葉の選び方、「浮草」の方がよりリアルに描かれている若い男女の恋愛模様には、時代の変化がはっきり現れている。登場人物の中では、飯田蝶子(浮草物語)と杉村春子(浮草)がそれぞれ演じた土地の女が、去ってゆく座長を見送る心境に大きな違いを感じ取ることができるだろう。飯田蝶子演じたおつねが別れ際に悲しみに暮れるのに対し、杉村春子のお芳は別れを哲学的に捕らえていると、ドナルド・リッチー氏は本DVD付属のエッセイで述べており、またこれは小津自身の心情の変化ではないかとも書いている。しかし、製作スタジオやキャスト、時代の違いといったものを越えてなお、小津が生涯かけて問い続けた家族のあり方、カメラを通じて人間を見つめる暖かい眼差しに変わりはない。それこそが小津が世界中で強く共感され続けている一番の理由と言えるだろう。ディスク#1: "A Story of Floating Weeds" (浮草物語)(1934年作/86分/モノクロ/サイレント)本編はオリジナル比率1.33:1。HDトランスファー、リマスター映像。オプションとして、Donald Sosin氏によるサウンドトラック収録があり、サウンド有り/無しのどちらかを選んで鑑賞することができる。サイレントに馴染みのない方には、サウンドトラック付きでの鑑賞がお勧めだ。作品の古さからレストアしきれなかった傷やチリも見られるが、モノクロのコントラストは全編を通じて安定しており、大画面でも十分鑑賞に耐えうる画質に仕上がった。特別収録には、日本映画研究の権威であり、小津作品の著書もあるドナルド・リッチー氏によるオーディオ・コメンタリーがある。ディスク#2: "Floating Weeds" (浮草)(1959年作/119分/カラー)本編はオリジナル比率1.33:1、日本語DD1.0ch。HDトランスファー、リマスター映像・音声。映像はディテールや色彩が美しく蘇り、モノラル音声もクリアーで良好。Criterionレーベルとしての質を損なわない出来栄えだ。特別収録には映画批評家のロジャー・エバート氏によるコメンタリー、劇場予告編を収録。DVDメニュー画面は、2作品とも同じ一座の公演開始を待つ観客席の映像だが、「浮草物語」はモノクロ、「浮草」はカラーという演出で、メニューのデザインも美しい。どちらも本編にはON/OFF切り替え可能の英語字幕を収録。また、ブックレットとしてドナルド・リッチー氏による2作品の比較エッセイ"Stories Of Floating Weeds"を付属。リージョンは日本のプレーヤーでも再生可能なリージョン・オール。*「浮草」が小津の唯一の大映作品となったのは、「彼岸花」に山本富士子の起用を強く希望した小津が、大映で作品を一本撮ることを交換条件に山本富士子の出演を実現したといういきさつがある。
2004/08/16
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